9月 25, 2025
ギフト券の仕訳、もう迷わない!勘定科目と具体例を徹底解説

企業活動において、ギフト券の購入や贈呈、あるいは自社での発行は珍しくありません。しかし、「このギフト券、どう仕訳すればいいのだろう?」と、その会計処理に頭を悩ませる経理担当者の方も多いのではないでしょうか。

ギフト券の仕訳は、購入時と利用時、そしてその目的によって適切な勘定科目が変わるため、注意が必要です。本記事では、ギフト券の会計処理の基本から、具体的な仕訳例、消費税の取り扱いまで、図を交えながらわかりやすく解説します。この記事を読めば、ギフト券に関するあなたの疑問がすべて解決し、自信を持って仕訳ができるようになるでしょう。

ギフト券の会計処理の基本原則

ギフト券の会計処理は、購入した時点と実際に利用された時点の2つのフェーズで大きく考え方が異なります。この基本を理解することが適切な仕訳の第一歩です。

購入時の考え方

ギフト券を金銭で購入しても、その時点ではまだ費用が発生しているわけではありません。将来的に商品やサービスと交換できる「引換券」としての性質を持つため、購入時は資産として計上するのが一般的です。

利用時の考え方

購入したギフト券を実際に利用した際、初めてその価値が費用として認識されます。例えば、従業員に渡したり、取引先に贈呈したりしたタイミングで、適切な費用勘定に振り替えることになります。

ギフト券の会計処理は、購入時と利用時で会計上の性質が変化することを理解し、それぞれのタイミングで適切な処理を施すことが重要です。

ギフト券購入時の勘定科目と仕訳

ギフト券を自社の福利厚生や販促活動のために購入した場合、その購入時にはどのような勘定科目で仕訳をすれば良いのでしょうか。具体的な例と共に解説します。

購入時の勘定科目

ギフト券を自社で利用する目的で購入した場合、通常は「貯蔵品」という勘定科目で資産計上します。これは、まだ費用として消費されていない物品を一時的に資産として管理するための科目です。消費税については、原則として不課税取引となります。

具体例:自社利用目的のギフト券購入

例:従業員への福利厚生として利用するため、商品券10,000円分を現金で購入した。

日付 借方 金額 貸方 金額
X年X月X日 貯蔵品 10,000 現金 10,000

このように、購入時点ではまだ費用ではなく、資産である「貯蔵品」として計上します。

ギフト券の購入時は、利用目的を考慮し「貯蔵品」などを用いて資産計上することが、その後の費用処理を正しく行う上で不可欠です。

取引先への贈答用ギフト券の仕訳

ビジネスにおいて、取引先への感謝や良好な関係維持のためにギフト券を贈呈することはよくあります。この場合の仕訳はどのようにすれば良いのでしょうか。

購入時の処理

取引先へ贈る目的でギフト券を購入した場合も、まずは「貯蔵品」として資産計上します。この段階ではまだ贈呈していないため、費用にはなりません。

贈答時の処理

実際に取引先にギフト券を贈呈した際に、「接待交際費」として費用計上します。この時、貯蔵品を減少させる仕訳を行います。

例:取引先に贈呈するため購入した商品券5,000円分を、現金で購入後、後日贈呈した。

【購入時】

日付 借方 金額 貸方 金額
X年X月X日 貯蔵品 5,000 現金 5,000

【贈呈時】

日付 借方 金額 貸方 金額
X年X月X日 接待交際費 5,000 貯蔵品 5,000

取引先へのギフト券は「貯蔵品」で一旦処理し、実際に贈答したタイミングで「接待交際費」として費用計上するのが正しい処理方法です。

従業員への福利厚生用ギフト券の仕訳

従業員のモチベーション向上や慰労目的で、福利厚生としてギフト券を配布する企業も少なくありません。この場合の仕訳について解説します。

購入時の処理

従業員への配布目的でギフト券を購入した場合も、まずは「貯蔵品」として資産計上します。これは、まだ従業員に渡していないため、費用ではないからです。

配布時の処理

従業員にギフト券を配布した際に、「福利厚生費」として費用計上します。この時、貯蔵品を減少させます。

例:従業員への福利厚生として利用するため購入した商品券10,000円分を、後日従業員に配布した。

【購入時】

日付 借方 金額 貸方 金額
X年X月X日 貯蔵品 10,000 現金 10,000

【配布時】

日付 借方 金額 貸方 金額
X年X月X日 福利厚生費 10,000 貯蔵品 10,000

従業員へのギフト券は「貯蔵品」で購入し、「福利厚生費」へ振り替えるのが基本ですが、一定の条件を満たさないと給与課税の対象になる可能性があるので注意が必要です。

キャンペーン景品としてのギフト券の仕訳

新商品のプロモーションや顧客獲得のために、キャンペーンの景品としてギフト券を利用することがあります。この場合の会計処理を確認しましょう。

購入時の処理

キャンペーンの景品として利用するためにギフト券を購入した場合も、他の目的と同様に「貯蔵品」として資産計上します。景品として配布するまでは費用になりません。

景品として利用時

実際にキャンペーンでギフト券を景品として提供した際に、「広告宣伝費」として費用計上します。この際、貯蔵品を減少させる仕訳を行います。

例:キャンペーンの景品として利用するため購入した商品券30,000円分を、後日景品として提供した。

【購入時】

日付 借方 金額 貸方 金額
X年X月X日 貯蔵品 30,000 現金 30,000

【景品提供時】

日付 借方 金額 貸方 金額
X年X月X日 広告宣伝費 30,000 貯蔵品 30,000

キャンペーン景品としてギフト券を購入した際は「貯蔵品」で処理し、実際に景品として提供した時に「広告宣伝費」として計上します。

ギフト券を発行する側の会計処理

これまでギフト券を購入・利用する側の会計処理を見てきましたが、自社でギフト券を発行し、販売する場合は会計処理が異なります。発行側の視点から解説します。

発行・販売時の処理

自社が発行するギフト券を顧客に販売した場合、その時点ではまだ商品やサービスの提供が完了していないため、売上とはなりません。この場合、「前受金」という負債の勘定科目で処理します。

例:自社が発行するギフト券10,000円分を顧客に現金で販売した。

日付 借方 金額 貸方 金額
X年X月X日 現金 10,000 前受金 10,000

ギフト券利用時の処理

顧客がギフト券を利用して商品やサービスを購入した際に、初めて売上を認識します。同時に、負債として計上していた「前受金」を減少させます。

例:顧客がギフト券10,000円分を利用して自社の商品を購入した。

日付 借方 金額 貸方 金額
X年X月X日 前受金 10,000 売上高 10,000

ギフト券発行側は、発行・販売時に「前受金」として負債計上し、顧客が実際に利用した時点で売上高に振り替えるのが正しい会計処理です。

消費税の取り扱いにおける注意点

ギフト券の会計処理において、特に混乱しやすいのが消費税の取り扱いです。原則と例外を理解し、適切に処理しましょう。

原則:ギフト券の購入・販売は不課税

ギフト券は、金銭債権の譲渡に準ずるものとして、原則として消費税の課税対象外(不課税取引)とされています。これは、ギフト券自体が商品やサービスではなく、将来の商品等との引き換えを約束する「券面額」であるためです。

例外:金券ショップでの売買手数料

金券ショップなどでギフト券を売買する際にかかる手数料は、役務の提供に対する対価であるため、消費税の課税対象となります。本体価格は不課税でも、手数料には消費税がかかる点に注意が必要です。

利用時の課税

ギフト券を使って実際に商品やサービスを購入した場合は、その購入した商品やサービスが消費税の課税対象となります。例えば、ギフト券で課税対象となる商品を10,000円分購入すれば、その10,000円には消費税がかかります。

ギフト券本体の購入・販売は原則不課税ですが、金券ショップの手数料やギフト券で交換する商品・サービスには消費税がかかるため、細やかな確認が重要です。

会計処理を効率化するポイント

ギフト券の会計処理は、枚数が増えれば増えるほど管理が複雑になりがちです。しかし、いくつかのポイントを押さえることで、効率的に処理を行うことができます。

利用目的ごとの明確な管理

ギフト券を購入する際、その利用目的(接待交際用、福利厚生用、広告宣伝用など)を明確にし、誰に、何のために、いつ渡したかを記録することが重要です。これにより、適切な勘定科目の選択が容易になります。

定期的な棚卸しと確認

未使用のギフト券も「貯蔵品」という資産であるため、定期的に実在庫と帳簿残高を照合する棚卸しが必要です。これにより、紛失や誤使用のリスクを減らし、正確な資産管理が可能になります。

会計システムの活用

クラウド会計ソフトやERPシステムを活用することで、ギフト券の仕訳入力の自動化や、購入・利用履歴の管理、証憑(領収書など)のデジタル保存が可能になります。これにより、手作業によるミスを減らし、業務効率を大幅に向上させることができます。

用途ごとの管理、定期的な棚卸し、会計システムの活用は、ギフト券の会計処理の効率化に不可欠な要素であり、正確性と迅速性を確保します。

よくある質問

Q1: ギフト券と商品券は仕訳が異なりますか?

A1: 会計処理上の大きな違いはありません。どちらも「金銭債権の譲渡に準ずるもの」として扱われ、購入時は「貯蔵品」などとして資産計上し、利用時に目的別の費用に振り替えるのが一般的です。ただし、券種によっては消費税の取り扱いが異なる場合があるため、個別の確認が必要です。

Q2: ギフト券を少額でもらう場合、課税されますか?

A2: 法人や個人事業主が事業活動としてギフト券を受け取った場合、その用途によって収益として認識され、課税対象となる可能性があります。個人的な贈与の場合は、贈与税の基礎控除額(年間110万円)を超える場合に課税対象となることがあります。

Q3: 期限切れのギフト券はどう処理しますか?

A3: 期限切れにより利用できなくなったギフト券は、資産価値を失うため、その時点で「雑損失」などの勘定科目で費用計上し、貯蔵品から減少させます。ただし、発行側が再度利用可能な措置を取る場合もあるため、規約を確認しましょう。

Q4: 電子ギフト券も同じ仕訳で良いですか?

A4: 電子ギフト券も、その本質は従来のギフト券と同様に将来の商品・サービスとの引換券であるため、基本的な会計処理は同じです。購入時は「貯蔵品」や「前払費用」として計上し、利用時に目的別の費用に振り替えます。ただし、購入方法によっては、一時的に「仮払金」で処理することもあります。

Q5: 消費税のインボイス制度で何か変わりますか?

A5: ギフト券の購入自体は原則不課税であるため、インボイス制度による直接的な影響は大きくありません。しかし、金券ショップでの手数料や、ギフト券を利用して購入した課税対象商品については、適格請求書の保存が必要になります。特に、発行側が「前受金」として処理し、顧客が利用した際に売上として計上する場合には、その課税売上に対して適格請求書の発行義務が生じることがあります。

まとめ

ギフト券の会計処理は、「購入時」と「利用時」の2つのフェーズで考えることが基本です。そして、その利用目的によって適切な勘定科目を選択することが最も重要となります。

主な勘定科目としては、購入時には「貯蔵品」、利用時には「接待交際費」「福利厚生費」「広告宣伝費」などが挙げられます。また、ギフト券の本体価格は原則として消費税の不課税取引ですが、金券ショップでの手数料や、ギフト券を使って購入する商品・サービスは課税対象となるため、消費税の取り扱いにも十分な注意が必要です。

適切な記録と管理、そして会計システムの活用によって、ギフト券の会計処理は効率的かつ正確に行うことが可能です。本記事で解説したポイントを参考に、自信を持って日々の業務に取り組んでください。

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